東京地方裁判所 昭和37年(ワ)10508号 判決
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〔判決理由〕右の事実によれば、本件物件は請負契約未了のまま被告が入居した昭和三四年一一月二八日原告より被告に対しこれが引渡を了したものとみるのが相当である。なお、原告は被告が右物件に入居するのを認めたのは、原告において継続中の残工事を施行するため請負人の占有を妨げない限度においてであり、また右入居に際して、工事未了部分を速やかに完成することを被告が協力すること、および工事完成のうえ代金完済と同時に右物件を引渡すことを条件として一時的な入居占有を認めたにすぎないと主張する。もとより請負契約における工事未了部分がある場合に、完成に先立ち入居した注文者が残工事を施行するため請負人が立入工事の施行をするのを認め、未了部分の完成に協力すべきことは当然であり、敢えに特約の有無をまたないところであるが、右の事実があるからといつて工事目的物の引渡があつたと認定するにつき何ら妨げとなるものではない。また本件において注文者たる被告の協力を条件として被告が一時的に本件物件に入居するのを原告から承認されたこと、工事完成のうえ代金完済と同時に右物件を引渡す旨の条件が存在したことは、これを認めるに足る証拠がない。
ところで、家屋建築請負契約において、請負人が全部の材料を提供した場合には、それによつて完成した家屋の所有権は請負人に帰属するが、その完成後はもちろん一部未完成の部分がありそのため請負代金の一部未済があつても、それが独立した家屋として所有権の対家になりうると認められる程度に築造された後、注文者にこれが引渡を了したときは当事者間の特約その他特別の事情がないかぎり、その引渡と同時に右完成もしくは未完成の家屋の所有権が注文者に移転すると解するを相当とする。本件についてこれをみるに、本件物件が未完成であるとはいえ、人の居住しうる程度に築造されており、しかも不動産登記手続上すでに家屋の実質をそなえ所有権保存登記がされていることは当事者間に争いがないから、右物件は独立した家屋として所有権の対象となるものということができる。しかして、原告は工事完成のうえ代金完済と同時に本件物件を引渡しそれによつてはじめて被告が所有権を取得する旨の特約があつたと主張するが、これを認めるに足る証拠はなく、その他全証拠を精査してみても、本件物件の引渡と同時にその所有権が移転することを妨げるべき特別の事情の存在したことが認められないから、被告は右物件の引渡を受けた日に原告よりこれが所有権の移転を受けたものというべきである。(岡垣学)